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2006.01.11

「黒ひゲイ危機一発」

「黒ひゲイ危機一発」という「黒ヒゲ危機一発」のニュー・バージョンがトミーから発売されることになり、これに対し「セクシュアルマイノリティ教師ネットワーク(STN21)」という団体が、発売中止を求めています。

私は「販売中止を求めている」というのを聞いたとき、ちょっと驚きました。正直いって「そこまでやる必要あるの?」と思いました。

一方、mixiやブログで、ゲイによる、この抗議に対するかなり激しい批判や反対をいくつか読んで、それにも納得できないものを感じました。(トミーに「販売して欲しい」とメールを出したゲイの人もいるみたいです。)

そこで、もう一度、自分なりに考えてみました。

その結果、私は、今「STN21の方々が販売中止を求めるのはわかるし、それに反対はしない」という気持ちになっています。理由は次のとおりです。

1. 「黒ひゲイ危機一発」が「ゲイ=笑い」という社会の状況を前提とし、それを強化する
第一に、HGおよびHGをモチーフにしたこのおもちゃが「ゲイに対する差別」を大前提にしている、と思います。

HGは、「ゲイ=笑い」という前提がなければ、芸人として成り立たなかったと思うんですね。
HG自身は、個人的にゲイを差別はしていないかもしれないけど、「ゲイ=笑い」という世の中のイメージを利用しているとは思います。そして、それはHGをモチーフにした「黒ひゲイ危機一発」も同じだと思います。

こういう状況は、同性愛を明確に否定する法律や特定の宗教などによるものではなく、毎日の生活の中の一つ一つは些細に思われる嘲笑やからかいなどの積み重ねから生まれるように思います。

「ゲイはからかってもいいんだ」という雰囲気があるから、からかう。それによってその雰囲気がまた強化され、次のからかいを生み出す、という連鎖になっているのではないでしょうか。

異性愛者が多数を占める社会で、毎日の生活の中で、ゲイに対する嘲笑やからかいを指摘していくのはなかなか難しいことです。テレビ番組や商品にそういうものが見られたとき、それに対して抗議するのは有効なことだと思います。私は地道にそういう活動を続けることが大切だと思います。

2.「日本人危機一髪!」が売られていたら嫌じゃない?

STN 21のサイトに掲載されている、12月17日付けのトミーへの抗議文、TBSプロデューサーへの抗議文の中には、

もし、樽の中に入れられる存在が、同性愛者ではなく、障害者や 在日コリアンだったとしたら、そしてその人たちが入っている樽に剣を突き 刺して「楽しむ」玩具があったとしたら、そのような玩具を貴社は発売なさるのでしょうか。

と書かれています。
http://homepage3.nifty.com/stn/kougi2.html

私は、これに加えて、樽に入っているのが「日本人」だったらどうか、というのも考えてみて欲しいと思います。

昔から、アメリカ映画に登場する日本人その他のアジア人って、「こんな人いないよ」って感じのものが多かったし。また、80年代にはいわゆる「ジャパン・バッシング」が盛んで、アジア人の中でも、特に日本人を揶揄するような表現が溢れていました。(最近は、ずいぶん変わってきたと思いますが。)

今でも、もし、デフォルメされた『日本人』の人形を樽に入れた「日本人危機一髪!」っていうおもちゃが、外国で売られてたら、嫌じゃないですか?
海外で、そんなおもちゃ売られたら、日本では大勢の人が反対すると思います。

3.ゲイの子供たちのことを考えて・・・

日本のゲイは私も含めて(親しい友人等は除いて)カムアウトしていない人がほとんどです。たとえば、カムアウトしていないノンケの友達の家に行ったら「黒ひゲイ危機一髪!」があって、みんなでそれをやることになって、(ゲイの真似をしてる)HGのまねをされたりして、それで「面白いよねー」なんてニコニコするのは、ちょっと嫌。

もちろん、私を含め大人ゲイは ゲイとして嫌なこともいろいろ経験してるし、やり過ごせると思うけど、中学生ゲイの子が、友達の家に行ってそういう目にあったら、かなりつらい、と思います。

「クラスでゲイってからかわれている子供が、修学旅行でスマキにされて、『黒ひゲイ危機一髪』といわれて、みんなにドツかれる」なんて、ありそうで、想像するだけで苦しくなります。

また、たとえば中学校で、ゲイの子がいて、ゲイであることでからからかわれていて、それを(幸運にも)先生が注意した場合、子供たちが「だって大人だってゲイのこと笑ってるじゃん。有名おもちゃメーカーからおもちゃも出てるよ」って反論したら、先生はうまく答えられないのではないでしょうか。

STN21のサイトに掲載された、「私たちの考え ~玩具に必要な教育上の配慮について~」という2005年12月24日付けの文章には、以下のように書かれています。
http://homepage3.nifty.com/stn/kougi.html


私たちは、「ホモ」「オカマ」「レズ」、そして「ゲイ」という言葉によって、子どもたちがいじめや相手をけなす行動をとるのを、これまで教室の中で幾度となく経験してきました。同性愛の子どもは、自らの存在を肯定することの出来る環境にはなく、多くの場合、友達からも、教職員からも、そして家族からさえも孤立して生きています。

 情報社会といわれる今日、私たち大人のセクシュアルマイノリティは、インターネットをはじめとして、各種メディアから存在を肯定されるような情報を「当たり前」のように入手することができます。また、セクシュアルマイノリティ同士の出会いの中から、自らの存在を肯定し、受け入れられるようにもなります。少しずつではありますが、セクシュアルマイノリティをとりまく環境は変化しています。

しかし、子どもたちの能力、そして環境では、それは決して「当たり前」のことではなく、大人社会ほど、差別が当然であった環境の変化も残念ながらありません。

大人の同性愛者でも、時に生きづらさを感じたり、声をあげにくい「マイノリティ」でありますが、子どもは「大人社会」で必要とされる以上に注意がはらわれる必要があります。

私は、これはもっともな指摘だと思いました。

4.ゲイが拷問されている国もある。

私は、日本で、「黒ひゲイ危機一発」の発売によって、ゲイに暴力をふるってもいいと思う大人が増える可能性は低いと思います。

でも、今現在、同性愛者であることを理由に処罰されたり、拷問が行われる国もあるそうです。
それは外国のことですが、日本にまるっきり関係がないわけではない。
そういう国から日本に来て住んでいる同性愛者もいるでしょう。
最近では、イラン出身のゲイの男性(ジェイダさん(仮名))が、出身国での同性愛者に対する迫害を理由に、日本への亡命を求めましたが拒絶され、結局他の国に出国した、ということがありました。

そういう状況では、ゲイ(と名づけられている人形)を樽にいれて、突き刺しているように見えるおもちゃ(トミーは突き刺しているのではなく「縄を切って解放する」と説明していますが)には、やはり抵抗を感じます。

というわけで、最初STN21の販売中止要求にあんまり好意的ではなかったのですが、いろいろ考えているうちに、むしろ今はこの抗議を応援したい気持ちになっています。(実際になにかをするかどうかは考え中です。)

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